表具とは       
 現在、表具又は表装と言われている掛軸、屏風、額、襖、巻子、等
を製作する職業の起源は古く、仏教文化の伝来と共に伝承され、教
本、経巻を作り、装@手と呼ばれていました。
 東洋の書画は、主に紙又は絹(布)にえがかれていることが多く、そ
のままでは脆弱なため、紙で裏打ちすることにより強度を高めるよう
になりました。さらに鑑賞を助ける手段として書画のまわりに裂を張り
付け、保存、移動を容易にするため、巻くことが考えられ、今の形に
到達したものと考えられます。
 中国より伝来した形式がどのような形だったかは分かりませんが、
現在の文人表具や丸表具等のような形で、変化の少ない裂地や、白
に近い綸子(りんす)を使用していたと思われます。
 現存する最古の掛軸は一千年の歳月を過ている物があります。し
かし、中の書画は本当に一千年の時を数えますが、廻りの裂地や裏
打ち紙は当時の品ではありません。表具の寿命は、百年ほど。保存
状況のよい場所に保管しても二百年が限度が限度と思われます。書
画に剥落止を施し、裏打紙を取替えることにより後世に伝えられてい
ます。表装の技術によって東洋の書画が守られていると言っても過
言ではありません。                                                     
 表具の技法が日本に伝わり、独自の気候、風土や建築、さらに日本
人の持つ独特の感性により、平安時代に原形が作られ、室町時代に、
眞、行、草、の形が考案され、茶道の発展によりその形が定着しました。
 明治、大正、昭和、平成と時代を経ると、建築様式、書画の多様性に
より表具の形式も変わりつつあります。表具を施すと言うことは、書き下
ろした本紙(書画作品)に着物を着せるようなものです。表具をすること
により、初めて鑑賞することができ、品格も備わり、保存に適することに
なります。
 表具の裂地を選ぶ際は、本紙の内容により形式を考えます。仏教関
係の書画は、眞の三体の形のうち一番ふさわしい形をとり、裂地の取り
合せも荘厳、重厚感厳ある色柄を選びます。
 神道関係は、主に行の眞の形をとり、荘厳なうちに清涼感のある裂地
を使用します。
 一般的な書画は本紙の内容により、季節感、量感、色柄、明度を考え
て、裂地の色柄を選び、主に行の行、行の草の形をとりますが、従来よ
り伝わった書画の枠を越えた本紙のときは創造的な形を作るときもあり
ます。
 茶道関係の本紙には、行の行、行の草、小間に掛けられる軸は草の
行、草の草の形が多く使われ、清涼感ある裂地が好まれます。
inserted by FC2 system