表装工程    
取り合わせ=作品(本紙)を依頼された時、その作品の大きさ、内容
      により、形式と裂地の種類、色、柄を決定する。これを取り
      合わせという。表具技術者にとって、最も難しく重要な仕事
      で、美術的センスが要求され、個性が発揮される。
本紙調製=本紙を裏打する際、水や糊を使用するので、墨、絵の具
      のにじみ止をする。
水引き(縮み)=本紙が絹の時(絹本と言う)は水を引いて収縮させる。
      表装裂地も癖を取るために、必要に応じて、水を引き、乾
      燥させる。
裏打ち紙揃え=本紙、表装裂地の強度や狂いをなくすように、必要
      に応じ、薄美濃紙や美紙須を縦目、横目と蓋と二通りに継
      ぐ。絹本、裂地は棒継ぎ(刃物で切った紙をつないだもの)
      紙本、揉紙などは喰裂き継ぎ(水引きしてから裂いて毛羽
      立た紙同士をつなぐ)。
張り代つけ=絹本、表具裂を裏打ちするときに歪まぬように正確に
      固定するため、上下或いは左右に一寸ほど中肉の楮紙を
      張りつける。
肌裏打ち=本紙や裂地に対し最初の裏打ちを肌裏打ちと言う。絹本
      や裂地は濃い糊を、紙本や揉紙は水糊と呼ばれる薄糊を
      使う。
仮張り=裏打ちを施した本紙、裂地を敷き干し、或いは張り付けて
      乾かす。(張りつける板状のものも仮張りという)
増裏打ち=肌裏を施した本紙、裂地にさらに二度目の裏打ちをおこ
      なう。本紙と裂地の厚さ、腰の強さと狂いを取り、均一化す
      るためそれぞれに応じた美須紙を使用する。
切継ぎ=増裏打ちを施し、十分に仮張りした本紙、裂地を寸法、模
      様を合わせ、断ち、解れぬよう糊止めをしてから、継ぎ合わ
      せ掛軸のかたちにする。
                                    
中裏打ち=本紙が大きい時に切継いでから施す、さらに大幅の時は
      二回裏打ちをすることもある。
耳折り=予定した掛軸の寸法にしたがって、両縁を折曲げ、さらに外
      側3ミリ〜5ミリほどで断つ。これは裂のほつれ止めと、縁を
      厚くして補強と本紙が摺れないようにするためである。
上巻絹の準備=仕上げられた掛軸を巻いた時に、外側に露出する部
     分の保護と装飾に使う薄絹あらかじめ裏打っておく。
八双・軸袋付け=八双 (掛軸上部の半円形の木)と軸棒を付けるた
      めに、丈夫な楮紙の上を1センチ程折曲げ、切継ぎの終わっ
      た掛軸の上下に正確に張りつける。
張り代付け=耳折りの部分に喰裂した3センチ程の楮紙のケバだけ
      を接着し、総裏打ちの後、切れないように補強しておく。
総裏打ち=上巻絹を巻いた時全体を覆う位置に接着してから、宇田
      紙等を使用して裏打つ。すぐ仮張りする方法と敷干ししてか
      ら湿リを入れ、仮張りする方法がある。
返し張り=十分乾かしてから仮張りより剥し、裏に蝋を塗り、数珠で摺
      り、又仮張りする。2,3回繰り返すこともある。
仕上げ=八双、軸棒を作り、長時間仮張りした掛軸を剥し、一日置い
      てから八双、軸棒を付ける。形によっては風帯を縫い付ける。
      打込鐶を打込み、掛緒を付け、最後に巻緒を付ける。                                 
※修理改装の場合は、本紙の修理と解体作業が加わり、剥落止めや
表面の養生等、現状保護に注意しながら仕事を進めます。
 ここでは軸装を記しましたが、他に屏風・額・衝立・襖等を製作してお
ります。現在は内装関係の仕事が増え、細分、専門化されてきました。                                            
(本紙肌裏打ち)  
(耳折り)  
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